島が見えたよ

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楠均(ドラマー)

遥か昔のリズム録りの日のことじゃった。
帰り際に、美味しいパンとともに手渡された音の壺。
録音が収められた音の壺。
「いつ出来上がるか分からぬけれど、
たとえ世に災害や病が尽きぬとしても、
この壺を身辺に置いて心平らかに過ごすのですよ」
乙姫の目をした朝姫さまにそう言われて帰宅してから幾星霜。
時代とともに歌も世もすっかり様変わりして、
今では見知らぬ星で暮らす浦島太郎のような思いでいた私の耳にコンコンとノックの音。
それは糠味噌壺の横に置いてあった音壺の中から聞こえてくるではないか。
もしやこれはとすっかり老いた体を引きずって壺を抱えてみれば、
何やらかぐわしい匂いがして食欲をそそりますのでこらえきれずに…えいやと開けたる壺のふた。
もんどり落ちたる壺のふた。
中から飛び出す壺の音。
あの歌この歌なつかしい。
なのに虚を突くばかりの新鮮さ。
そうか、永遠とも思える長い時間をかけて絶妙に発酵がすすんだのだったか…。
いえいえそれはちがいます。
音姫さまとケンタウロス氏が一日も休まず壺に手を入れ、丁寧にかき回し続けた甲斐あってのことじゃ。
おかげで感染症蔓延下ですっかり曲がったわしの腰は伸びて、ヒゲは黒々と若返ったのじゃった。
このアルバムが沢山の子どもたちとダンスして、未来に輝きますように。

※「スイミースイミー 」「旅するバルーン」「朝がくるよ」
「オートフライト・コントロール」「Wednesday ブルース」
「ベーグルソング」「春が来た」参加 (Drums & Percussion)

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